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elama創業ストーリー episode.3(前編)

2024年6月15日 | 特集


【3】築40年の家からのスタート(前編)


熟睡とは程遠い一夜を過ごした。


はじめてネットカフェでシャワーを浴び

小さなスペースで

肘や膝を壁にぶつけながら

身支度を整える。



「どんな物件でもいいから、とにかく紹介してほしい。」



広島に降り立った時の希望に満ち溢れた表情は影をひそめ

2人して口を真一文字に結び

昨夜訪れた不動産屋の扉を開ける。



ただ待つ。

店主が口を開くのを。


目の前で物件情報が書いた紙を

パラパラとめくる音だけが店内に響く。



野太い声がようやく店内の空気を揺らす。


「この、築40年の一戸建てなら紹介できるかな。」



「…。」


「…、!?」


思わず言葉を失い、

半笑いで2人は顔を見合わせたが


店主は眉一つ動かさず、

こちらをみている。



「わかりました。こちらでお願いします。」


店主の無表情に、

もはや他の選択の余地がないことを

2人は同時に悟った。


もう、とにかく進むしかない。

なぜなら、後ろを振り返る選択肢はもうないのだから。

ルビコン川に架かる、引き返すための橋はもう川底に沈んでいたんだった。

続く。