【3】築40年の家からのスタート(後編)
実行部隊の東と藤田。
今まで経験してきた「仕事した」という概念が
マルっとひっくり返るくらい
文字通り「一心不乱」に仕事した。
また、
ブレーンとなる戦略コンサルタントの男も毎週
はるばる愛知県から週に一回
必ず駆けつけ一緒に仕事する。
いや、
一緒に仕事するというよりは
「指令してくる」と言った方が表現は適切か。
彼の脳みその回転数に追いつくのに必死だった。
とにかくアイデア創出のスピードが速い。
そして、
そのアイデアをダメだと思ったら
あっさり変更してしまう決断も、ものすごく速い。
言われた通りに作った資料がせっかく出来上がっても
見せた時には、
もう不要になっていることもしばしば。
流石に文句の一つでも言ってやろうかと、
大きく息を吸い込み、鬱憤を晴らす言葉を用意していたが
「なんかこの築40年の家で仕事するって、合宿みたいで楽しいよねぇ」
と呑気な言葉に拍子抜けしてしまい
あえなく、黙って仕事に戻るハメとなる。
こんな日々が延々と続く。
終わりの見えない暗中模索な状況に
白い吐息だけがもうもうと立ちこめる。