【5】1本の電話:前に進み出す
潮目が変わった。
そう感じたのは、ある日の昼食時。
忘れもしない。
有名カレーチェーン店で
注文の品が目の前に
着地したと同時にかかってきた、
一本の電話だ。
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2022年の秋にスタートし、
広報手段としてダイレクトメールを出し続けていた。
ただ、ダイレクトメールといっても、
E-mailやSNSではなく
A4チラシを印刷し、封筒にいれて送る
アナログな方法だった。
時には、2人で広島の医療や介護関係の施設に足を運び
elamaの核となる「がん・難病緩和ケア専門」の
部分について説明した。
施設やシステムの部分はもちろん、私たちの想いも添えて。
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電話の主な内容は、
「〇〇のような病状で他に受け入れる先がなく、困っている。」
というものだった。
正直、はじめての問い合わせの電話に
緊張して一瞬、頭が真っ白になった。
というのも、
難病の数は300を超える。
がんの状況も人により様々。
もちろん、これまで2人で片っ端から
がん・指定難病については
調べに調べつくしてきた。
ただ、藁をもすがるような人の声に
頭に入れてきた知識以上に
大切なものが何かを一気に悟った。
「もし可能であれば、一度施設にお越しください」
そう答えることがその時は精一杯だった。
(続く)