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「父として、そこにいる」—— elamaで見た風景

2026年2月9日 | 特集


あるとき、elamaで、
こんな時間がありました。


参列しない、という選択

もし、
結婚式に行けない身体だったら。

祝福する気持ちはある。
けれど、その場に「行く」ことはできない。

elama可部に入居するSさんは、
神経難病により、言葉を失っていました。
意思表示の手段は、瞬きと、わずかな表情だけ。

娘さんの結婚が決まった日、
Sさんが最初に選んだのは、
「参加しない」という決断でした。

それは、
諦めではなく、
自分を守るための選択でもありました。

諦めなかった人たち

「仕方がない」
そう言って終わらせることは、簡単です。

でも、
その言葉を使わなかった人たちがいました。

elamaのスタッフです。

奇跡を起こそうとしたわけではありません。
無理をさせようとしたわけでもありません。

できるかもしれない。
その“現実的な一線”を、
医療と介護の視点で、丁寧に探していきました。

諦めない、とは、
無理を通すことではない。

選択肢を残すこと。

瞬きで書いた手紙

声は出ません。
ペンも持てません。

それでも、
Sさんには伝えたい想いがありました。

使ったのは、50音順表。
一文字ずつ指し示し、
「Yes」のときは、瞬きをする。

ゆっくり、ゆっくり。
時間をかけて、
心を言葉にしていきました。

それは、
文字を書く作業ではなく、
想いをあきらめない時間でした。

この手紙を、
娘さんは、まだ知りません。

結婚式の朝

結婚式の朝。
elama可部から、式場へ向かいます。

特別なことはしていません。
いつも通り、体調を確認して、
いつも通り、声をかけて、
いつも通り、移動する。

ただ、
行き先だけが、少し違うだけ。

父として、そこに立つ

最初は、
行かないつもりでした。

迷いも、不安も、たくさんあった。

それでも、
家族と話し、
支える人たちと話し、

そして最後は、
自分で決めた。

父として、
その場に立ち会う、という選択。

誰かに連れてこられたわけではありません。
自分で選び、
周りが、その選択を支えた。

だから今日は、
ここにいます。

この日、父でいられたこと

娘の結婚式に、
父として、参加しました。

晴れ姿を見て、
その瞬間を、
ちゃんと見届けた。

それだけで、十分でした。

elamaがやりたいのは、
ただ看護をすることでも、
介護をすることでもありません。

その人が、
人生の大切な場面に、
自分として立ち会えるようにすること。

この日、
父でいられたこと。

それが、
何より大切なケアでした。